予備選最終日の6月3日、ミネソタ州セントポール。
約2万人の熱狂的な支持者の前に姿を現したオバマとミシェル夫人は、壇上に上がり、感慨深げに会場内を見回すとしばし見つめ合い、互いのこぶしを軽く突き合わせた。
ダップ(DAP=dignity and pride、尊厳と誇り)と呼ばれるこのジェスチャーは、相手を認知し、成し遂げたことを讃えて黒人同士が交わす握手の一種だ。
それは、アメリカ史上初めて黒人が二大政党の大統領候補になり、黒人のファーストレディーが誕生するかも知れないことを、見守る人々の胸に焼き付けた瞬間だった。
約2万人の熱狂的な支持者の前に姿を現したオバマとミシェル夫人は、壇上に上がり、感慨深げに会場内を見回すとしばし見つめ合い、互いのこぶしを軽く突き合わせた。
ダップ(DAP=dignity and pride、尊厳と誇り)と呼ばれるこのジェスチャーは、相手を認知し、成し遂げたことを讃えて黒人同士が交わす握手の一種だ。
それは、アメリカ史上初めて黒人が二大政党の大統領候補になり、黒人のファーストレディーが誕生するかも知れないことを、見守る人々の胸に焼き付けた瞬間だった。
「ペンシルベニアには保守的な白人がいて、黒人候補(オバマ)に投票しない有権者も多いだろう」。ヒラリーの有力支持者であるエド・レンデル同州知事が地元紙にそう語ったのは、2月上旬のことだった。同州の人口の8割を占める白人の大半は、ドイツやアイルランド、イタリア、ポーランドなどにルーツを持ち、裕福な特権階級の白人と区別して「ホワイト・エスニック」と呼ばれる。小さな町で鉄鋼や自動車産業を支えてきた労働者階級だ。高齢者とカソリック信者が多く、所得も学歴も低い。銃所有や中絶の是非をめぐって保守的な価値観を示し、80年代レーガン支持に回ったことから「レーガン・デモクラッツ」ともいう。全体数は減っているが、民主党のホワイトハウス奪回に欠かせない有権者層だ。
「God damn America!」(アメリカに神の呪いあれ)。そう叫ぶ黒人牧師の姿がTVに流れ始めたのは、3月13日だった。オバマが通う教会の元牧師ジェレマイア・ライトが、過去の説教でアメリカの人種差別や白人支配層について批判を繰り返していた、とABCが報道。大騒ぎが始まった。ライト師は、シカゴのサウスサイドにある大規模教会で30年以上牧師を務め、黒人コミュニティーの中心的存在になってきた。オバマとミシェル夫人の結婚式や2人の子供の洗礼を執り行い、オバマが「スピリチュアルな師」と仰ぐ人物だ。黒人解放神学の流れを汲み、時に過激なレトリックを使うことは以前から知られていた。
3月11日、ミシシッピの予備選でオバマは61%対37%でヒラリーに勝った。黒人票の92%がオバマに、白人票の70%がヒラリーに投じられ、予備選を通じて人種のラインが最も色濃く出た結果になった。しかし、その日、朝からメディアを賑わせたのは民主党の大物、ジェラルディン・フェラーロだった。下院議員だった84年、モンデールの相方として女性で初めて2大政党の副大統領候補に選ばれた(結果はレーガン&ブッシュに大敗)。今回の選挙ではヒラリーを支持し、資金集めを担当。そのフェラーロが、ロサンゼルスの地域紙に次のような発言をしていたことが明らかになったのだ。
スーパーチューズデー以降11連敗を喫し、追い込まれたヒラリー陣営は、あらゆる手段を用いて相手を攻撃するという意味の「キッチン・シンク」作戦に出た。その一環として2月29日、予備選を4日後に控えたテキサスで、CM「午前3時の電話」を流し始めた。寝室ですやすや眠る子供たち。そこに鳴り響く電話。不安げに子供部屋を覗く母親──。低い男の声が語る。「午前3時、子供たちは安全に眠っている。しかしホワイトハウスの電話は鳴っている。何かが世界で起きている。受話器を取るのは誰か、あなたの1票がそれを決める。世界の指導者を既に知り、軍隊を知り、この危険な世界でリーダーになれる経験豊富な人物に、あなたは受話器を取ってほしくないですか?」